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リトル・ダッキーのおはなし

『母を捜して』

 リトル・ダッキーはちいさなあひるのおもちゃです。

 ダッキーには、お母さんの記憶がありませんでしたが、それを格別悲しいこ
とだと思ったことはありませんでした。いつもダッキーのそばにはあなたがい
ましたし、今まで会ったこともないお母さんでしたから、会えなくて寂しいと
いうこともありませんでした。

 ところがある日、電話で母親と話しているあなたが、「うっせー、このくそ
ばばぁ。覚えてろよこのやろう!」と言って携帯電話をソファーに向に投げつ
けたのを見て、ダッキーはなんだか無性に自分のお母さんがどんな人なのかを
知りたくなりました。

「きっと、僕に似て、クセ羽根かもしれないなぁ。このクチバシの形は、お
母さん譲りなのかもしれない。会いたいなぁ。お母さんに」

 あなたは、投げつけた携帯電話が壊れていないか、こわごわ確認しています。
「ねぇ、僕のお母さんはどこにいると思う?」
  ダッキーがあなたに問い掛けると、曲がったアンテナを無理矢理戻そうとし
ながら、あなたはこう答えました。
「なーに言ってんのよ。お尻のとこに書いてあるじゃないの」

 ダッキーがお尻を鏡に写してよく見てみると、そこには「Made in China」
の文字がありました。