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リトル・ダッキーのおはなし

『ダッキーの不安』

 あなたが風呂に入っていったとき、ダッキーは今まで感じたことのない不安
に襲われている所でした。

「本当に、このままで良いのだろうか?僕の生き方は、これで間違ってはいな
いだろうか」

 ダッキーの独り言には気づかずに、あなたは洗い場の鏡で、熱心に自分の鼻
の穴を覗いています。

「結局、僕にはこうするしかなかったんだ」
  と、ダッキーは決心したようにつぶやき、浴槽の脇においてあるコップから
剃刀をそっと抜き取りその刃を思いつめた表情でじっと見つめます。そして、
その鋭い刃をおもむろに自分の首筋に当てると…

「ちょっと、あんた何してんの?!」
  あなたが叫ぶと、ダッキーはびくんと身をすくめて、上目遣いであなたを見
上げました。
「剃刀、どうしたの、それ。あたしのでしょ」
  強い口調であなたがダッキーを問いただすと、ダッキーは小声で答えました。
「だって、僕がいつも使ってる安全剃刀が見つからなかったから…」
「あ、あぁ…。そうなの。…良いわよ、別に。使って、それ」

 いつもは勝手に自分のものを使われると烈火のごとく怒るあなたが、今日は
あまり怒らないので、ダッキーは少しホッとしながらあなたの剃刀を使って毛
先の手入れを始めました。

 あなたは、無断でダッキーの安全剃刀を勝手に持っていって、自分の無駄毛
処理をしたことは内緒にしておこうと思いました。