|
『ダッキーの質問』
リトル・ダッキーはちいさなあひるのおもちゃです。
風呂場の隅にうずくまって、ブツブツ独り言をつぶやきながら入浴剤を選ん
でいるあなたに向かって、ダッキーはこう聞きました。
「ねぇ、なんで僕の体は小さいの?」
「うーん。それはね、あなたが皆にカワイイって愛されるためよ」
あなたはゆず湯の素が入っているボトルの蓋を開けて、くんくん匂いをかぎ
ながら答えました。
「じゃあ、なんで僕のクチバシは長いの?」と、またダッキーは聞きました。
「それはね、みんなからキスをされるためよ」
ゆず湯の素を指に付けて、そーっと舐めようとしながらあなたは答えました。
「でも僕ね、キスしたことないんだよ」
とダッキーがそっと打ち明けましたが、あなたはゆず湯の素があまりに苦く
て舌がビリビリ痺れていたので聞いていませんでした。
「僕の目は何でこんなに離れているの?」
「それはね、あなたの好きな人がどこにいても見えるようによ」
舌の感覚がないまま、よもぎ入り薬用入浴剤の袋を覗き込み、あなたは答え
ました。
「なんで僕の手は羽根だらけなの?」
ダッキーがこう聞いた時、あなたはおそるおそるよもぎ入り薬用入浴剤のつ
いた緑の指を舐めようとしているところでした。
「それはね、ふわふわのあなたを皆が抱きしめるためよ」
こう答えるやいなや、よもぎ入り薬用入浴剤がおいしいと知ったあなたは、
袋ごとベロベロと入浴剤を食べ始めました。
「ふーん、そうなのか」
ダッキーは、自分のことが少し分かったような気がしました。
|